弁護士のトラブル解決コラム 相続で口座凍結!預貯金を引き出す方法は?
コラム・解決事例
COLUMN / CASE
2024.04.01
相続・遺言
弁護士のトラブル解決コラム 相続で口座凍結!預貯金を引き出す方法は?
相続が発生したら故人の口座は凍結されてしまいます。
口座が凍結されると預金の入出金が一切できなくなります。公共料金の自動引き落としもできなくなるため、水道光熱費の引き落とし口座を故人の口座にしていた場合、それらの支払いも止まってしまいます。
このコラムでは、口座凍結への対処法を専門家である弁護士が解説します。
2019年に新設された遺産分割前の相続預金の払戻し制度についても解説していますので、口座凍結に困っているという方はご確認ください。

1 故人の口座が凍結されるのはいつ?
口座の凍結は、金融機関が相続の発生(故人が亡くなったこと)を知った際に行われます。
市町村役場に死亡届を提出すれば自動的に口座が凍結されると思っておられる方もいますが、市町村役場と金融機関が連携しているわけではないため、これは誤解です。
金融機関が故人の死亡の事実を把握するきっかけの多くは相続人からの申し出です。
その他にも、新聞の訃報欄や死亡広告、取引先からの情報などから把握することもあります。相続人の申告前に口座が凍結されるのは上記のようなケースになります。
2 口座凍結前に預貯金を引き出すと違法になるの?
口座が凍結されるのは金融機関が故人の死亡の事実を把握した後なので、故人がお亡くなりになってから凍結されるまでの間にはタイムラグがあり、その間であればATM等で預貯金を引き出すことが可能です。
それでは、口座凍結前に預貯金を引き出す行為は違法でしょうか?
結論から言うと、口座凍結前に預貯金を引き出しても違法ではありません。
もっとも、口座凍結前に預貯金を引き出す行為は、後々になって大きなトラブルを招きかねないため注意が必要です。
リスク① 相続放棄ができなくなるおそれがある
故人に多額の借金がある場合、相続放棄をすることが検討されます。相続放棄を行えば、財産を引き継がない代わりに借金を引き継ぐことも回避できます。
しかし、故人の口座から預貯金を引き出して使ってしまうと、場合によっては故人の相続財産を無条件で全て相続した(これを単純承認と言います。)とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。
相続放棄ができなくなるか否かを判断するためには専門的知識が必要です。専門家である弁護士に相談してから対応することをお勧めいたします。
リスク② 相続トラブルに発展するおそれがある
口座凍結前に預貯金を引き出して費消したことが他の相続人の疑心暗鬼を招くことがあります。
その場合、本来であれば円満に終われるはずであった相続が『争続』になりかねません。
場合によっては、他の相続人から損害賠償請求を受けることもあるため、慎重な対応が必要です。
- 預貯金を引き出す前に全ての相続人の了承を得ておく
- 引き出した預貯金の使い道を説明できる資料を残しておく
争続となることを防ぐためには上記の2点を意識することが重要です。
それでもトラブルを完全に防ぐことはできません。
やむを得ない場合でなければ口座凍結前に預貯金を引き出すことは避けた方が無難と言えます。
3 口座凍結後に預貯金を引き出す方法
口座凍結が解除されるのは相続手続きが終わってからというのが原則です。
口座凍結は相続財産の確定を容易にすると同時に、口座からの入出金をできなくすることで相続人間のトラブルを防ぎ、相続手続きが円滑に進むようにすることを目的としています。
したがって、相続手続きが完了して目的を達成するまでは口座凍結は解除されません。
パターン① 遺言書がある場合
遺言書とは、故人が生前に相続財産の分配について行った意思表示を書面化したものです。
相続手続きでは故人の遺志が尊重されます。
そのため、遺言書がある場合は手続が簡略化され、基本的に遺言書の記載に従って遺産分割が行われます。
遺言書にはいくつかの様式があり、細かな手続きは様式によって異なります。また、遺言書の有効性を巡って争いになる場合もあります。
スムーズに手続きを進めるのであれば専門家である弁護士に相談いただくことが確実です。
パターン② 遺言書がなく遺産分割協議を行った場合
遺言書がない場合、相続人間で話し合いを行い、相続財産の分配を協議によって取り決めることになります。遺産分割協議書とは、この相続人間の協議の結果を記載した書類のことです。
相続人間で協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停・審判の申立てを行い、裁判所を利用した話し合いで協議をまとめることを試みることになります。
それでもなお協議がまとまらない場合は、裁判所が遺産分割の方法を決めることになります(これを遺産分割審判と言います。)。
遺産分割調停では、およそ1ヵ月から2ヵ月に1回のペースで話し合いの場が設けられます。話し合いは当事者双方が主張を尽くすまで繰り返され、通常1年から2年、長いときは3年を超えることもあります。
遺産分割調停は長期に及ぶうえ、ご自身の考えを裁判所に適切に伝えたうえで他の相続人を説得するためには専門的知識が不可欠です。
当事者間で遺産分割協議がまとまらないことが見込まれる場合は、早期に弁護士にご相談ください。
パターン③ 遺言書もなく遺産分割協議書もない場合
遺言書もなく遺産分割協議書もない場合、金融機関に相続関係届出書を提出することになります。
相続関係届出書は金融機関によって書式や形式が異なり、また、書類の名称も異なっています。
そのため、各金融機関に必要書類を問い合わせる必要があります。故人が複数の金融機関を利用していた場合、それだけ手続きが煩雑になります。
4 遺産分割前の相続預金の払戻し制度
口座凍結を解除するためには相続手続きを完了させる必要があります。遺言書があればいいですが、遺言書がない場合は遺産分割協議を行わなければなりません。
遺産分割協議には年単位の時間を要することが一般的ですが、それだけ長期間にわたり故人の預貯金を動かせないとなると相続人が当面の生活費に事欠く可能性がありますし、葬儀費用の支払いに苦慮することもあり得ます。
このような不利益を解消するために新設された制度が「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」です。
この制度を利用する方法は2つあります。
方法① 金融機関単独の手続き
金融機関に必要書類を提出するだけでも払戻しを受けることはできます。
受け取れる金額は『払戻額=相続開始時の預金額×1/3×法定相続分』で計算されます。
例えば、口座に600万円の預貯金があり、ご自身の相続分が1/4の場合、
600万円×1/3×1/4=50万円
と計算されるため、制度を利用することで50万円の払戻しを受けることができます。
この制度は各金融機関それぞれで利用できるため、複数の預金口座がある場合、各金融機関からそれぞれ払戻しを受けることができます。
なお、一つの金融機関から払戻しを受けられる金額には150万円という上限額が設定されています。
方法② 家庭裁判所を利用した手続き
家庭裁判所に遺産分割調停・審判の申立てを行っている場合、裁判所に申し立ててその審判を得ることによって、金融機関から払い戻しを受けることができます。
この場合、払戻しが受けられる額は家庭裁判所が仮取得を認めた額になります。
また、払戻しが認められるのは、生活費の支弁等の事情により相続預金の仮払いの必要性が認められ、かつ、他の相続人の利益を害しない場合に限られています。
5 まとめ
以上のように、故人の預貯金を引き出す方法は、口座凍結の前後で複数の選択肢があります。
いずれの方法を採るにせよ、必要書類を集めて金融機関で手続きをするのは大変な苦労を伴います。
また、遺産分割協議を行う必要がある場合は、専門的知識がなければご自身が損をしていることにすら気付くことができず、適切な遺産分割協議が行われているかを判断することはできません。
スムーズに相続手続きを進めるためにも、早めに専門家に相談されることをお勧めいたします。
かつら綜合法律事務所は相談料無料、LINE予約・メール予約は24時間365日受け付けております。まずは気軽にお問い合わせください。
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