薬物事件① 覚醒剤

コラム・解決事例

COLUMN / CASE

2023.12.01

刑事弁護・少年事件

弁護士のトラブル解決コラム 覚醒剤で逮捕された場合に不起訴・執行猶予を獲得する方法

違法薬物の代表例の一つが覚醒剤です。警察が公表している資料によると、覚醒剤の特徴は主に白色の粉末や無色透明の結晶で、臭いはなく、やや苦味があるというものです。
俗に「シャブ」「スピード」「アイス」などと呼ばれ、単に「粉」と呼ばれることもあります。

覚醒剤は依存性が強く、乱用を続けると幻覚や妄想が現れたり、時には錯乱状態になって他人に暴行を加えたりするようになります。大量摂取をすることで急性中毒による死亡事故を引き起こすこともあり、非常に危険な薬物といえます。

これらの危険性から他の薬物犯罪と比較しても厳しい刑罰が設けられています。実務上も、令和2年における起訴率は77.2%と非常に高い一方で、起訴猶予率は8.5%と低く、厳しい対応がされていることが伺えます。

このコラムでは、このような重大犯罪である覚醒剤取締法違反について、その概要や刑罰の内容、不起訴処分や執行猶予を獲得する方法等を弁護士が解説いたします。

 

1 覚醒剤に関して犯罪となる行為

覚醒剤を規制するために制定された覚醒剤取締法という法律があります。
覚醒剤に関わる行為は、そのほとんどが覚醒剤取締法で規制されています。

  • 覚醒剤の使用
  • 覚醒剤の所持
  • 覚醒剤の譲渡・譲受け
  • 覚醒剤の輸出入


覚醒剤には関わらない。ご自身を守るためにはそれが一番です。
しかし、世の中には知らず知らずのうちに覚醒剤に関わってしまっていたというケースもあります。例えば、同居の恋人が覚醒剤を隠し持っていた、知人から覚醒剤と知らずに預かっていたといったケースです。そのような場合であっても、「覚醒剤の所持」の疑惑があるとして警察に逮捕されることがあります。
実際に覚醒剤取締法違反で処罰されるかは別問題ですが、逮捕されるだけでも大きな不利益となることに変わりは「ありません。
覚醒剤取締法違反に関して捜査機関から何らかの接触を受けた場合、まずは専門家である弁護士にご連絡いただくことを強くお勧めいたします。

2 覚醒剤取締法違反の刑罰は?

覚醒剤取締法違反では、その行為態様と目的に応じて刑罰を定めています。

  単純目的 営利目的
所持・使用・授受 10年以下の懲役 1年以上の有期懲役、情状により500万円以下の罰金の併科あり
製造・輸出入 1年以上の有期懲役 無期もしくは3年以上の懲役、情状により1000万円以下の罰金の併科あり

上記の図のように、覚醒剤取締法違反では「罰金刑」が定められていません。
そのため裁判官の書面審理のみで手続きが終わる略式裁判が選択されることはなく、公開の法廷での正式な刑事裁判を必ず受けることになります。

なお、「10年以下の懲役」という場合、刑期は1ヵ月以上10年以下の範囲で選択されます。「1年以上の有期懲役」という場合は、1年以上20年以下の範囲から選択されます。
そのため、覚醒剤取締法は「所持・使用・授受」よりも「製造・輸出入」を重く規制していることになります。

また、営利目的での「製造・輸出入」の場合、無期刑となる可能性すらあり、非常に重い刑罰が定められています。

覚醒剤取締法違反の刑罰相場は、単純目的の使用・所持・授受の場合で

懲役1年6ヵ月~2年(初犯の場合は執行猶予3年程度)

となります。もっとも、量刑は様々な事情を考慮して決定されるものですので、上記の範囲で収まるとは限りません。
実際に、有名歌手が覚醒剤取締法違反で逮捕されたケースの場合、初犯であったにもかかわらず懲役3年執行猶予4年という相場を超える判決がなされています。
相場は参考程度に留め、覚醒剤取締法違反の疑いをもたれたときは可能な限り早く弁護士にご連絡ください。

3 不起訴を獲得するためのポイント

覚醒剤取締法違反で不起訴を獲得することは極めて困難です。

覚醒剤取締法違反の事件は、被害者のいない犯罪であるという特徴があります。
他の事件では被害者と示談をすることによって不起訴となる可能性が高まりますが、覚醒剤取締法違反の場合、そのような弁護活動を行うことができません。

また、覚醒剤取締法違反の場合、言い逃れのできない「物的証拠」があるケースがほとんどです。例えば、尿検査で尿から覚醒剤の成分が検出された場合、尿検査結果という「物的証拠」がある以上、使用の事実を否定することはできません。

とはいえ、不起訴となるケースが全くないわけではありません。
実際に、当事務所で取り扱った事件のなかには懸命な弁護活動の結果、無実が証明されて不起訴となったケースがあります。

不起訴を目指すためには、逮捕当初から一貫した姿勢で取調べに臨むことが重要です。しかし、百戦錬磨の捜査機関からの取調べを受けて、真実を貫くことは容易ではありません。そのことは数多くある冤罪事件が自白を契機に起こったことが証明しています。
そのため早期に弁護士と面会し、取調べに臨むうえでの助言を受けることが重要です。
無実の罪で逮捕されてしまった場合、何よりも早く弁護士にご連絡ください。

4 執行猶予を獲得するポイント

執行猶予とは、有罪による刑の執行を一定期間猶予する制度です。
執行猶予判決を得ることができれば、刑事施設に収容されることなく社会の一員として更生を図っていくことが認められます。

執行猶予の獲得を目指す場合、容疑の内容が事実である場合は速やかにこれを認める方針をとります。そのうえで、更生の可能性が高く、再犯のおそれが低いことを主張していく必要があります。

具体的には以下のような活動を行っていくことになります。

  • 捜査機関に反省の態度を示し、あるがままの事実を話す
  • 家族の協力を得て薬物依存からの脱却をサポートしてもらう
  • 薬物を通じて知り合った者と関係を断ち、薬物が手に入らない環境を作る
  • 薬物依存の治療に参加する


覚醒剤取締法違反は重大犯罪ですが、一つひとつの活動を積み重ねていくことで執行猶予を獲得できる可能性が高まります。
弁護士と協力し、二人三脚で社会での更生を目指しましょう。

5 弁護士に依頼するメリット

メリット① 弁護士であれば自由に接見ができる

逮捕された場合、家族や知人のと自由に面会をすることはできません。接見禁止の措置が取られた場合、家族や知人との接見はできず、社会とのつながりを完全に断たれてしまいます。
しかし、弁護士は例外です。弁護士であれば、逮捕段階から制限時間なく自由に面会することが可能です。
弁護士に依頼することで、弁護士を通じて家族や知人に必要な連絡を取ることもできるようになりますし、刑事裁判を見据えた助言を受けることができるようになります。

メリット② 贖罪寄付等の情状に有利な手続きを進められる

覚醒剤取締法違反の場合、被害者がいない犯罪なので示談を行うことで反省の態度を示すということができません。そのような場合、贖罪寄付という制度を利用したりすることで反省していることを示す方法があります。
その他にも薬物依存の治療を進める段取りを組んだり等して被疑者・被告人の情状が良くなるように努めてもらえます。
覚醒剤取締法違反は重大な犯罪です。だからこそ、弁護士に依頼して有利な情状を一つでも多く積み重ねていくことが重要です。

メリット③ 保釈請求を行って早期の身柄解放が実現できる

覚醒剤は証拠隠滅が容易です。そのため、覚醒剤取締法違反の疑いをもたれた場合、高い確率で逮捕されてしまいます。
もっとも、起訴後であれば保釈請求という手続きを利用して身柄解放を求めることができるようになります。弁護士に依頼することで、保釈請求をスピーディに行い、早期の身柄解放を実現することができるようになります。

6 覚醒剤取締法違反事件の弁護士費用

刑事事件を解決するまでには、示談活動・接見・拘留延長阻止・保釈請求といった多岐にわたる活動を要します。
当事務所では、これら活動ごとに追加費用を発生させることはしておりません。
これら活動は刑事弁護士に必要不可欠なものであり、これらを欠いては適切な弁護活動はできないと考えるからです。
そのため、当事務所では刑事弁護フルサポートを標準プランとしています。

初 回 相 談 料 無 料

項目 着手金(税込) 報酬金(税込)
起訴前刑事弁護 33万円 33万円
起訴後刑事弁護 55万円 55万円

※接見回数は起訴前4回、起訴後4回を基準回数とし、基準回数を超えた場合は1回につき3.3万円(税込)の追加費用が発生いたします。
※共犯事件、被害者が複数いる事件、その他事案が複雑な事件については別途費用が発生する場合があります。

7 覚醒剤取締法違反事件解決までのフロー

覚醒剤取締法違反事件は上記図のようなフローを辿ります。
逮捕された場合、逮捕から起訴されるまで最長23日間の身体拘束を受けることになります。
多くの事件では起訴後も身体拘束が続き、判決まで数ヵ月にわたり身体拘束を受けることもあります。
これほど長期にわたり身体拘束を受けると、逮捕されたことを職場に秘密にしておくことは難しく、家庭環境にも悪影響が及びかねません。

前述したように、覚醒剤取締法違反の場合は逮捕されて身柄を拘束されることがほとんどです。起訴後には保釈という手続きを利用して身柄の解放を求めることができるので、弁護士に依頼して早期に身柄解放を実現することをお勧めいたします。

8 最後に

覚醒剤はその依存性・危険性の高さから他の薬物より厳しい規制が取られています。
このように覚醒剤に関して厳格な刑罰を定めているのは日本だけではありません。諸外国の中には死刑や終身刑が科せられる国すらあります。
このような規制の背景には、覚醒剤が蔓延すると個人だけでなく国すら滅ぼすとの考えがあります。
その危険性を考慮すると、覚醒剤は絶対に手を出すべきではありません。

しかし、人間は弱い生き物です。このような覚醒剤の危険性が周知されているにかかわらず、覚醒剤取締法違反で逮捕される方は後を絶ちません。
もしも覚醒剤に手を出してしまったら、または、大切なご家族が覚醒剤取締法違反で逮捕されてしまったら、可能な限り早く弁護士にご相談ください。

かつら綜合法律事務所は初回相談無料、LINE予約・メール予約は24時間365日受け付けています。刑事弁護は初動が大切です。まずはご相談ください。