ファイル共有ソフト

コラム・解決事例

COLUMN / CASE

2023.04.28

インターネットトラブル

弁護士のトラブル解決コラム ファイル共有ソフトの利用者が発信者情報開示請求を受けた場合の対応

2023年3月『Winny』というファイル共有ソフトを題材とした映画が公開されました。
Winnyは2000年代はじめに登場した革新的なファイル共有ソフトです。その革新性から脚光を浴びましたが、著作権侵害を促進する側面があり、著作権侵害を理由に逮捕者が続出し、遂には開発者が著作権侵害幇助の疑いで逮捕されるなど社会問題化しました。
ファイル共有ソフトによる著作権侵害はその手軽さから悪気なく行ってしまいがちですが、民事責任・刑事責任を追及され得る違法行為です。
実際に逮捕者も出ており、悪質なケースでは実名報道もされています。決して安易に考えるべきではありません。

  • BitTorrent・BitComet・μTorrent
  • Gnutella・Linewire・Cabos
  • PerfectDark
  • Share


上記は実際に逮捕者が出ている代表的なファイル共有ソフトです。
近年ではBitTorrent(ビットトレント)の利用者から発信者情報開示請求を受けたという相談が頻繁に寄せられています。特に、AV(アダルトビデオ)作品については、発信者情報開示請求を行う会社が急増しているように見受けられます。
このコラムでは、これらファイル共有ソフトを一度でも利用したことがある方に向けて、発信者情報開示請求を受けた場合の対応について解説します。
もしも既に手元に「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いているという場合、対応を誤らないようにすぐに弁護士にご相談ください。

 

1 ファイル共有ソフトの利用が危険な理由

ファイル共有ソフトの利用そのものは違法ではありません。
違法なのはファイル共有ソフトを利用することで著作権侵害をすることです。
アニメ、映画、アダルトビデオ、音楽、漫画といった娯楽作品をダウンロードした経験がある場合、特に注意が必要です。

違法アップロードは危険かもしれないが自分は違法ダウンロードしかしていないから大丈夫

そのように思っている方は特に危険です。実は、ファイル共有ソフトでデータをダウンロードすれば、他のユーザーの要求に応じて自動的に当該データがアップロードされる仕組みになっています。
また、2021年の法改正によりそもそも違法ダウンロードも刑事罰の対象となっています。
ファイル共有ソフトをめぐる法規制は厳罰化してきています。
過去数年にわたって何事も起きなかったから今後も大丈夫。そのような考えは今すぐ改めましょう。

2 ファイル共有ソフトの利用による法的責任について

ファイル共有ソフトを利用して著作権侵害をしてしまった場合、民事的責任と刑事的責任の双方を問われ得ます。

(1)民事責任について

著作権侵害を行った場合、不法行為を理由に損害賠償請求を受けることになります。
不法行為という制度は喧嘩で相手に怪我をさせてしまった場合等に用いられるものです。
ただし、著作権侵害のケースでは加害者に不利となる特別のルールが適用されます。
それが損害額の推定規定です(著作権法114条1項)。この規定により、以下のような計算式で算定された金額が損害額として請求されることになります。

損害額=侵害者の譲渡等数量×権利者の単位あたりの利益-権利者が販売等を行えない事情に応じた金額

例えば、1枚あたり1000円の利益となる映像作品を違法にアップロードし、それが10万回ダウンロードされた場合、1億円(1000円×10万枚)の請求を受けることになります。
なお、通常1万枚までしか売れない映像作品の場合、請求額は1000万円(1000円×1万枚)となります。
違法ダウンロード・アップロードされる著作物は一定程度の需要がある作品と考えられるため、請求される損害額は莫大なものになり得ます。

著作権者から損害賠償を請求する書面が届いた場合、この損害の推定規定に基づいて極めて高額な請求が記載されていることも珍しくありません。なかには1億円を超える請求がされている事案もあります。

(2)刑事的責任について

著作権侵害に関する刑事責任は非常に重いものになっています。

違法ダウンロード:2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方

音楽や動画については1回でも違法ダウンロードすれば刑事罰の対象となります。
他方で、漫画を違法ダウンロードした場合、正規版が有償発売されており、かつ、反復継続的にダウンロードしていた場合のみ刑事罰の対象にされています。

違法アップロード:10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方

違法アップロードについては、テレビCMや映画館で周知されているためご存知の方も多いかもしれません。
近年、海賊版サイトの運営によって巨額の収益をあげていた事件では、主犯格の男性に懲役3年・罰金1000万円の両方という極めて厳しい刑罰が科されました。加えて、海賊版サイトの広告収入で得たとされる約6257万円の犯罪収益についても、これを没収するとの判決が言い渡されています。
前述したとおり、ファイル共有ソフトの利用は違法アップロードを伴います。重大な刑事罰が科され得ることを改めてご認識ください。

3 ファイル共有ソフトを利用したことは発覚するのか?

ファイル共有ソフトを利用した人を調査することは可能です。
専用のソフトを使うことで、ファイル共有ソフトを利用した人のIPアドレスは容易に調査することができます。
IPアドレスとはインターネットで通信するための住所のことです。ネットワーク上の各機器に割り当てられており、通信相手を指定する際に使用されます。
このIPアドレスが分かれば、プロバイダを特定することが可能になります。
プロバイダが特定できれば、プロバイダに当該IPアドレスについての発信者情報(氏名、住所、メールアドレス、電話番号など)の開示請求がされます。

「発信者情報開示に係る意見照会書」という書面がお手元にある場合、権利者がプロバイダに対して発信者情報を開示するための手続きを行っている段階にあります。

実際に損害賠償請求を受ける直前まできていますので、すぐに弁護士にご相談ください。

4 発信者情報開示に係る意見照会書への対応方法

プロバイダへの発信者情報開示請求は裁判手続きを利用して行われます。
「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いている場合、権利者は既に裁判手続きを利用しているのです。
これに対する対応方法は3パターンあります。

  • 無視する
  • 拒否の回答をする
  • 同意の回答をする


匿名掲示板では無視しても問題ないといった言説もあるようですが、これはお勧めできません。
期限内に回答がなされなければ、意見なしとみなされて手続きは進行してしまいます。
「拒否」か「同意」の回答をすべきです。
もっとも、裁判所は違法アップロードの事案では開示を認める傾向にあります。
「拒否」とは開示を認めるべきではない法的根拠があるとの意見を意味しますが、違法に著作物をアップロードしている以上、このような主張を行うことには無理があると言わざるを得ません(あくまでも違法アップロードの事案に関してです。例えばインターネット上で誹謗中傷してしまったという事案では開示そのものを阻止できるケースもあります。)。

結論として、違法アップロードの事案で「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いた場合にお勧めの対応は1つです。

開示に同意をして権利者と示談をする

示談とは、民事責任について当事者間で話し合い、加害者から被害者に被害金や慰謝料等の賠償金を支払う代わりに、被害者からの許しを得ることをいいます。

示談の成立は民事責任について当事者間で解決したに過ぎません。そのため、示談が成立していたとしても起訴されたり、有罪判決を受けたりすることはあります。強盗や強姦といった重大事件ほどその傾向は高くなります。

もっとも、示談が成立していることは刑事処分を決めるうえで重要な考慮要素でもあります。また、著作物の違法アップロードは親告罪(起訴するにあたり被害者の告訴が必要となる犯罪)が原則となっています。違法アップロードで収益を得ているといった悪質なケースでなければ、示談をすることでそもそも刑事事件化することを避けることができます。

5 弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼することで、権利者との間で早期に適切な内容の示談を成立させることが期待できます。
裁判例では約2億円近い請求に対して認められた損害額が200万円であったというケースもあります。
権利者からは数百万円、数千万円といった請求がなされがちですが、弁護士であれば裁判例に基づき適切な反論を行い、大幅な減額での示談を実現できます。

なお、匿名掲示板では相場額といったものが流布されているようですが、真偽が明らかではないうえに、仮に真実であったとしても記載された金額は過去の一事例に過ぎない可能性が高いです。
著作権侵害は刑事責任も問われ得ます。軽率な対応は危険です。専門家である弁護士にご相談のうえ対応することを強くお勧めいたします。

6 インターネットトラブルの弁護士費用

初 回 相 談 無 料

着手金 報酬金
22万円(税込) 22万円(税込)


繰り返しますが、違法アップロードの事案で刑事事件化を避けるためには権利者と示談を行うことが極めて重要です。
近年では権利者も対応を厳格化する傾向にありますので、ファイル共有ソフトを利用して著作権侵害を行ってしまった場合は早急な対応が必要となります。
かつら綜合法律事務所は初回相談無料、LINE予約・メール予約は24時間365日受け付けています。また、インターネットトラブルについては日本全国対応をしています。まずはご相談ください。

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