弁護士によるトラブル解決コラム 内定と内々定について解説! 

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2024.06.01

労務問題

弁護士によるトラブル解決コラム 内定と内々定について解説! 

就職活動に明け暮れる学生の姿を目にする機会も多くなってきました。
一部業界を除けば、就職活動は一般的に以下のようなスケジュールで行われます。
① 3月に就職情報解禁
② 6月に採用選考開始
③ 10月に内定出し
来年の春から新社会人となる方の中には、そろそろ内々定が出される時期です。
この内々定と内定について正確に理解をしているでしょうか。
本コラムでは内定と内々定の違いについて弁護士が解説します。

1 内定を取り巻く法律問題

(1)内定の法的性質について 
企業に入社する際、就職活動を行い、面接や適性診断を経て晴れて内定に至った方が多いかと思います。
日常的に使われる「内定」という言葉ですが、その法的性質を正確に理解している方は多くはありません。

内定とは、法的にいうと始期付き・解約権留保付き労働契約を意味します。

内定辞退等により最終的に内定先に入社しない場合もあるため、世間一般では、内定段階で企業との間に正式な契約関係があるというイメージはないかもしれません。
しかし、企業が内定通知を出し、それを受け取った学生側が内定を受諾した時点で、企業と学生の間には正式な労働契約が成立しています。
もっとも、新社会人の場合、学校を卒業して4月からの就労となるのが一般的です。その点では通常の労働契約と異なるため、勤務開始時期について「始期付き」であると考えられます。

また、内定は入社時に一定の条件を満たしていること、例えば、内定段階で通っていた高校・大学を卒業していることが前提となって出されることが一般的です。そのため、何らかの理由で卒業ができなかったり、病気や怪我等で正常に就労できない健康状態になっていた場合、企業には内定を取消すことが認められています。
前述したように、内定段階で労働契約は成立しています。したがって、内定取消しとは労働契約の解約を意味します。
このように労働契約の解約権が企業側に留保されているため、「解約権留保付き」とされているのです。

(2)内定取消しは自由にできるのか?
内定取消しは企業に許された権利です。しかし、これを自由に行使することはできません。
内定取消しは「労働契約の解消=解雇」を意味します。

そのため、「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる」場合でなければ、内定取消しは許されません。

また、内定の取消は、通常の解雇と同様、労働基準法第20条(解雇の予告)、第22条(退職時等の証明)などの規定が適用されますので、使用者は解雇予告など解雇手続きを適正に行う必要があります。また、採用内定者が内定取消しの理由について証明書を請求した場合には、速やかにこれを交付しなければなりません。

(3)内定者側で気を付けるべきこと
内定を出されたか否かといった点が曖昧な状態だと、内定を巡るトラブルを引き起こしかねません。トラブル防止の観点からも、内定通知書を使用者からもらうことをおすすめ致します。
それが難しい場合は、内定を通知された際のメールなどを残しておくといいでしょう。

なお、複数の企業から内定を頂いている方もいらっしゃると思いますが、労働者の側から内定を辞退することにほとんど制約はなく、日本国憲法に定められた職業選択の自由として認められています。
近年の就職活動は売手市場といわれ、企業側は新入社員をなかなか確保できない状況が続いています。そのような事情から、内定を出した企業が内定者に就職活動の終了や他社からの内定辞退を迫る「オワハラ」が社会問題となっています。内定辞退をしない旨の誓約書を提出させる企業もあります。
しかし、このような誓約書に法的効力はありません。
とはいえ、企業も多くの時間を割いて採用活動を行っています。内定を辞退する場合、可能な限り早期に辞退の連絡をするようにしましょう。

2 内々定と内定の違い

内々定は採用予定通知を意味します。
前述したとおり、内定は「始期付き・解約権留保付き労働契約」との法的性質を有しており、その時点で労働契約が成立しています。
しかし、内々定は採用予定の通知に過ぎず、契約関係を発生させるような法的効力は有していません。
内々定は企業側が学生の囲い込みを図るために行っている慣行のようなものに過ぎないからです。

したがって、内々定の取消しは原則として自由であり、企業側が内々定を取消しても違法ではありません。

もっとも、内々定を出された側としては労働契約が確実に締結されて入社できることを期待するでしょう。そのような期待権は保護する必要があります。
そこで、内々定者の期待が法的保護に値する程度に高まっている場合は、内々定の取消しは不法行為となり、企業への損害賠償請求が認められます。
また、事情によってはもはや内々定ではなく内定と同視できるケースもあります。そのような場合、内定と同様の保護が与えられます。

3 まとめ

内定と内々定の最大の違いは、学生と企業の間に労働契約が成立するか否かという点にあります。
就職活動は社会人のスタートを決める貴重な時期です。そのため、学生側も企業側も正確な知識をもって臨む必要があります。もっとも、内定や内々定の取消しの違法性を判断することは非常に難しく専門的な知識を要します。その他にも就職活動をめぐるトラブルは多岐にわたりますので、トラブルの際は専門家である弁護士にご相談ください。
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